用語解説

ここでは、本ウェブサイトに登場する衛星開発の専門用語に関して、簡単な説明を行います。

もくじ

-A-

Altium Designer

Alitum社の回路設計CADソフトウェア。 Nano-JASMINEプロジェクトでは、Altium Designerの機能を全面的に活用し、 回路設計を行っています。また、このことはAlitum社でも紹介されています。

外部リンク:
Alitum社による東京大学衛星プロジェクトの紹介



▲Altium Designerを用いた回路設計の様子

AOCS

Attitude and Orbit Control Systemの略。衛星の姿勢制御や軌道管理を担うサブシステムです。

AT

Acceptance Testの略。受入試験の意味。衛星のフライトモデルはロケットに取り付けられる前に 打ち上げ環境を模擬した受入試験にかけられ、搭載の可否を判断されます。

→関連:QT

-B-

BBM

Bread Bode Modelの略。ブレッドボードモデル。衛星の基本構成や電気的動作を検証するために製作されます。 Bread Bodeは文字通り「パンをこねる板」のことであり、1からアイデアを練り上げるという役割を喩えています。 この段階での外見は回路やセンサ類が並べられただけのもので、傍目には衛星に見えないことでしょう。 BBMで基本的な検証が完了すると、次にEMの開発に入ります。

-C-

CCD

Charge Coupled Deviceの略。デジタルカメラなどに広く使われる半導体素子です。発明は1970年に遡りますが、 カメラへの利用が進み始めたのは1980年代からであり、世界最初の位置天文衛星であるヒッパルコス(1989年打ち上げ)では 望遠鏡にCCDではなく、光電子管が用いられていました。

Nano-JASMINEが小型衛星にも関わらずヒッパルコスに匹敵する観測能力を得られる理由の一つに、 CCD技術の進歩を挙げることができます。

C&DH

Command and Data Handlingの略。衛星の計算機内のミッションバスデータ処理や、 地上から送られたコマンドの処理を担うサブシステムです。

CDR

Critical Design Reviewの略。詳細設計審査会。
衛星のミッション目的に対してどのような設計が行われているかを外部の識者を交えてレビューし、 打ち上げの可否を決定する会。中須賀研ではエンジニアリングモデルからフライトモデルへの移行時期に行います。

CubeSat

1999年にUSSS(University Space Systems Symposium)で採択され、 小型衛星開発を行う日米の大学を中心とした国際的な教育目的のプロジェクトにおいて製作される 小型衛星をいいます。 1辺10㎝立方体、重量1㎏以下と定められた超小型衛星で、アマチュア無線を使って運用されます。 また、広義には大学などが開発する超小型の衛星全般をさす場合があります。
2003年に打ち上げられた東京大学のXI-IVおよび東京工業大学のCute-Iを含む世界5機の衛星が 世界初のCubeSatクラス人工衛星となり、大きな脚光を浴びました。

-D-

DBM

段ボールで作成した実物大模型、段ボールモデルのかっこいい呼び方。残念ながら中須賀研内部でしか通じない模様。

▲使用方法

-E-

EM

Engineering Modelの略。エンジニアリングモデル。 衛星の実機を想定したモデルで、構造や電気回路、電力等の確認と試験を行います。 Nano-JASMINEではBBMSTMで得られた知見をもとにこれらを統合する役割を担うほか、 ロケットとのインターフェース調整や打ち上げを想定した振動衝撃試験など、 一般的にPMで行われる作業も担当することになっています。

-F-

FM

Flight Modelの略。フライトモデル。 最終的にロケットによって打ち上げられる衛星のことをフライトモデルと呼びます。

FOG

Fiber Optic Gyroscopeの略。空間に対する回転を測るセンサをジャイロと呼び、 昔からコマの原理を用いた機械式のジャイロが船舶や航空で用いられてきました。
FOGはサニャック効果と呼ばれる相対論的効果を用いて回転を測るもので、 機械式に比べてより安定・高精度に動作させることができます。

FPGA

Field Programmable Gate Array。ユーザーが内部を自由に組み替えることができるCPUで、 用途に合わせた柔軟な設計をすることができます。
宇宙用としても、最近ではNASAの火星探査ローバーに搭載されるなど、 活躍の場面を広げつつあります。

-G-

GaAs

ガリウム砒素。半導体材料の一種で、宇宙用太陽電池に使われます。 GaAs太陽電池は高価で脆いため一般には余り使われませんが、 非常に高効率なため宇宙用として広く活用されています。

GPS

-H-

-I-

-J-

JASMINE

Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Explorationの略。 国立天文台にて検討が進められている、次世代の位置天文観測衛星です。 Nano-JASMINEは、JASMINEに搭載される予定の新しいミッション機器の実証という立場から 開発をスタートした衛星です。

-K-

-L-

-M-

mas

milli-arc-secondの略。ミリ秒角。角度の単位で、1masは1度の3600000分の1に相当します。

MC

Magnetic Cancellerの略。磁気キャンセラ。といっても一般に使われている機器ではなく、 姿勢安定要求の厳しいNano-JASMINEのために提唱・開発されるものです。 衛星自身が発生する磁場は、地球の磁場との相互作用によって衛星に僅かな運動を生んでしまいます。 MCは衛星内部の磁場を常時打ち消すことで、この相互作用を抑える大切な役割を果たします。

MLI

Multi Layer Insulationの略。多層のシート構造を持ち、 宇宙空間の激しい温度変動から衛星を守るために使われる断熱材料です。 多くの衛星に見られる金色の部分はこのMLIが巻かれていることを示しています。
Nano-JASMINEでも望遠鏡を衛星の他の部分から断熱するために、衛星内部にMLIが用いられています。


▲望遠鏡を包む金色のフィルムがMLI

MTQ

Magnetic Torquer。磁気トルカ。衛星に回転力を与えるアクチュエータです。 コイルに電流を流すことで磁場を作り、地球磁場との相互作用で衛星を制御します。 スラスタのように燃料が要らないことや構造が単純であることから、 小型衛星の姿勢制御によく使われています。

-N-

Nano-JASMINE(ナノ・ジャスミン)

中須賀研究室が開発し、打ち上げられる通算4機目の衛星。 研究室としては初のサイエンスミッションを試みます。また、 スペースアストロメトリ(宇宙位置天文観測)を行う衛星としても 日本初、世界で2例目というチャレンジングな衛星となっています。 打ち上げは2010年度を予定しています。

-O-

-P-

PAF

Payload Attach Fittingの略。衛星分離部。
衛星とロケットの結合部分を指します。Nano-JASMINEでは分離ボルトと4本のスプリングという構成を取っています。(→構造系紹介

PDR

Preliminary Design Reviewの略。基本設計審査会。
衛星の基礎的な設計が完了した段階で、外部レビュアーを交えて開かれる審査会。 エンジニアリングモデルの製作開始前に行われる場合が多いようです。 Nano-JASMINEでは、概念設計からBBMの製作への移行時期(2006年度冬)に行われました。

PIC

Peripheral Interface Controllerの略。米Microchip社が発売しているマイクロコンピュータ(マイコン)の一種。取扱いの容易さやシリーズの豊富さから電子工作にも人気があり、 中須賀研究室の衛星にもPICが搭載され、軌道上で活躍しています。

PM

Prototype Modelの略。プロトタイプモデル。 実際に打ち上げるFMと同等のモデルを同等の部品と組立手順で作成し、 実機で想定される各種環境に耐えられるか、ロケットとのインターフェースはうまくいくか等の 最終的な確認を行います。 低予算で開発を行う大学衛星の場合、多くは試験を行ったPMをそのままFMとして打ち上げる(この場合PFMと呼ばれます)か、 PMをFM打ち上げ失敗時のバックアップとして待機させる(XI-IVに対するXI-Vなど)といった使い方をします。

PRISM(プリズム)

中須賀研究室が開発し、打ち上げられる通算3機目の人工衛星。 Pico-satellite for Remote-sensing and Innovative Space Missionsの略。愛称「ひとみ」。 地上の画像を宇宙から撮影するリモートセンシングを行います。 伸展ブーム構造によって、わずか20㎝級の衛星ながら地表分解能30mという精度を達成します。


▲PRISM外観

リンク:
PRISM プロジェクトサイト

-Q-

QT

Qualification Testの略。認定試験の意味。衛星のプロトモデル等を使用し、 打ち上げ環境より厳しい基準で衛星がどの程度耐えられるかを実証する試験です。 実際のフライトモデルでは、衛星へのダメージを防ぐためにより実際に近い環境での試験(受入試験=AT)が行われます。

-R-

RAM

Random Access Memoryの略。パソコンのメモリなどに利用される、半導体を使った記憶装置です。 高速ですが電源を切ると内容が消えてしまうため、計算のための一時的な記憶領域として利用されます。

ROM

Read Only Memoryの略。半導体を使った記憶装置です。 RAMに比べて低速ですが電源を切ってもデータが保持されるので、 データの記憶領域として利用されます。

RW

Reaction Wheel。衛星の一部がある方向に回転すると、反作用によって衛星本体は 逆方向に回転する力を受けます。これを利用するのがRWで、内部に積んだホイールを高速で回転させることで、 衛星の姿勢を制御します。

-S-

SEB

Single Event Burn outの略。 SEEのひとつで、おもにMOSFETで生じることが知られています。 電荷を帯びた放射線粒子がMOSFET内部の寄生npnトランジスタを動作させることで、最悪の場合永久破壊に至ることがあります。

SEE

Single Event Errorの略。シングルイベント。宇宙空間で動作する人工衛星は、放射線に常に晒された状態にあります。 放射線にも粒子の種類や持っているエネルギーの違いがあり、それぞれ衛星にもたらす効果も異なります。 SEEは、強いエネルギーを持った単一の放射線粒子が衛星の電子機器に衝突した際に起こすエラーの総称です。 SEEの中には、半導体内部にショートを起こすSEL、ビットの0と1を反転させるSEU、デバイスの永久破壊をもたらすSEBなどがあります。

宇宙用デバイスはSEEに対して強い設計がなされていますが、非常に高価なのが難点です。中須賀研究室では、 一般機器で使われているような安価で高性能のデバイスを用いているため、衛星がSEEを頻繁に起こす可能性があります。 そのため、放射線試験による耐宇宙性能評価や、設計レベルでのSEE対策がたいへん重要となっています。

SEL

Single Event Latch upの略。 SEEのひとつで、CMOS構造を持つデバイスをショートさせる効果をもたらします。 強い放射線粒子がデバイス内部にサイリスタと呼ばれる構造を作りだし、意図せずそこに電流が流れ続けてしまいます。 結果、動作不良を起こしたり、そのまま放置すると熱破壊を起こす場合もあります。

SEU

Single Event Upsetの略。 SEEのひとつで、RAM等に対して起こることが知られています。 放射線がデバイス内部に保持されたビット(1/0情報)を反転させてしまい、プログラムの挙動や センサデータの取得値などに悪影響をもたらします。

SEUは動作周波数が高く、集積密度の高いデバイスほど頻繁に起こる傾向があります。 中須賀研究室の衛星で使われるCPUもワンチップマイコンから高性能なFPGAに移行しており、 SEUへの対策はもはや必須といえます。

STM

Structural and Thermal Modelの略。熱構造モデル。 衛星の熱環境、機械環境を模擬し、各部の温度や剛性、固有振動数、組み立て・分解・運搬手順などを試験するために製作されます。 BBMとは逆に外見は衛星そのものなのですが、回路類は同じ発熱量のヒーターに置き換えられており、 電気的には動作しない「箱」です。
Nano-JASMINEでは、STMを使って2008年5月~7月に熱真空試験を、2008年11~12月に振動試験を行いました。

STT

Star Tracker。カメラから得た星の画像とコンピュータ内部で持っている星図情報を照らし合わせて自分の向いている方向を割り出したり、 星画像のぶれから衛星の速度を計算するセンサです。大型衛星でも広く使われている比較的高性能の姿勢決定センサですが、 Nano-JASMINEではSTTだけでは要求する精度に達することができない為、最終的には ミッション望遠鏡をSTTのように用いることで観測可能な状態に達する予定です。

S帯

通信に利用される電波は周波数ごとに名前が付けられており、混信が起こらないようそれぞれ異なる用途に利用されています。
外部リンク:電波の周波数による分類 - Wikipedia

S帯(Sバンド)は2~4GHzの周波数を持つ電波帯を指し、衛星放送やアマチュア無線などに利用されています。 中小型衛星の通信用としても比較的よく利用されており、Nano-JASMINEでもS帯アンテナの搭載が決定しています。

-T-

TID

Total Ionizing Doseの略。トータルドーズ。 宇宙放射線は衛星に様々な影響をもたらします。エネルギーの強い粒子が単発で作用するSEEのほかに、 放射線の蓄積がデバイス故障をもたらす場合もあります。こちらの効果は総照射線量(=Total Ionizing Doze)によって決まり、 これによるデバイスの故障をトータルドーズ効果とも呼びます。

-U-

-V-

Virtex-5

Xilinx社が製造するFPGAです。 Nano-JASMINEではメインコンピュータとして採用され、 いわゆるマイコンを使用していたこれまでの中須賀研衛星と比べて、 非常に高い計算能力を獲得しています。

-W-

-X-

XI-IV(サイ・フォー)

中須賀研究室が宇宙に送り出した最初の人工衛星にして、東工大Cute-1らとともに打ち上げられた世界最初のCubeSatです。 2003年に打ち上げられ、6年以上もの間正常に地球の画像を撮り続けています。 ちなみにXI-I,XI-II,XI-IIIは何処に行ったのかといえば、これらはもともとBBMEMに名付けられた名前で、 どこかに打ち上げられたわけではありません。


▲XI-V外観

リンク:
CubeSat プロジェクトサイト

XI-V(サイ・ファイブ)

XI-IVに続いて2005年打ち上げられた、中須賀研究室2機目のCubeSatです。 外観はXI-IVとほぼ同じですが、新型太陽電池の搭載やカメラ機能の拡充など、各所に改良が加えられました。
また、XI-Vによって撮影された画像は「さいめーる」というサービスによって、世界中の方々にメール配信されています。



▲XI-V外観

-Y-

-Z-