PHOENIX Plasmaspheric Helium ion Observation by Enhanced New Imager in eXtreme ultraviolet 観測器の概要 PHOENIXは反射型望遠鏡です。集光部には波長30.4 nmの光を効率良く反射するように設計された多層膜反射鏡(特殊なコーティングが施された鏡)を使用しており、検出部には、マイクロチャネルプレート(MCP)とレジスティブアノードエンコーダ(RAE)を使用しています。MCPは入射した光子を電子に変換し、その電子の入射位置をRAEにより検出します。 PHOENIXは、鏡筒径が60 mmという超小型(手乗りサイズ)の望遠鏡です。このような超小型の望遠鏡で宇宙空間に存在するプラズマの発する極端紫外光の撮像を行うことは、世界初の試みです。超小型化と高効率化を同時に実現することで、世界最先端の科学に挑戦します。 観測目的 地球電離圏の更に上層には、太陽の紫外線によって電離したプラズマが支配している領域(プラズマ圏)があり、太陽風が運んでくる電磁気的な擾乱により、様々な現象が引き起こされることが知られています。プラズマ圏は質量の軽い水素イオンが数密度にして全体の約9割を占めています。残りの約1割はヘリウムイオンと微量の酸素イオンで構成されています。水素イオンは電子を持ちませんが、ヘリウムイオンと酸素イオンは内部の電子が励起/脱励起されることにより、目には見えない波長の光を発します(太陽共鳴散乱光)。この散乱光をリモートセンシング観測しプラズマを可視化することにより、プラズマ圏の時々刻々と変動する様子を時間的/空間的に分離することが可能となるのです。 PHOENIXは、ヘリウムイオンが太陽共鳴散乱により発する極端紫外光(波長30.4nm)を遠方から継続的に撮像することにより、プラズマ圏の動的描像の大局的な理解を目指します。