研究室として以下のような衛星の設計・開発・運用実績を有しています.
ISSL OSS (Open-Source Software)プロジェクトとは、人工衛星の研究・開発に必要な各種ソフトウェアをオープンソース化し、宇宙開発の発展に貢献することを目指したプロジェクトです。現在、主に次の3つのソフトウェアをGitHubに公開しています。
それぞれの詳細については、GitHubページをご参照ください。
超小型衛星による地球月圏からの深宇宙脱出の技術実証と地球磁気圏の観測を計画している50kg級衛星です。ISSLがバスの検討開発を行い、東京都立大学を中心に開発中の超小型X線撮像分光装置の搭載を計画しています。
Ref: 特別推進研究 X線で挑む地球磁気圏のグローバル撮像
研究室で過去に開発したキューブサットや50kg級衛星の知見を統合し、多様なミッションに活用できる汎用的で高性能な6Uバスの開発を行うプロジェクトです。ISSL6Uの標準バスを用いて、下記二つの6U衛星の開発・運用を行っています。 単にこれらミッションに沿った衛星開発を行うだけでなく、将来を見据えたツール開発、ソフトウェア開発、汎用ユニット/ バス開発を統合的に実施します。
TASA (台湾国家宇宙センター) と共同開発している6U衛星です。TASAが開発する望遠鏡と、ISSLが開発する6Uバスを組み合わせ、ミッションとして TDI (Time Delay Integration) 技術を用いた高SN比の画像撮影を目指します。2024年11月5日に国際宇宙ステーションへ輸送され、2024年12月9に軌道上に放出されました。2025年2月24日に規定高度を下回ったため停波しました。
ソニーグループ株式会社、JAXA、東京大学の共同プロジェクトである STAR SPHERE の中で打ち上げた6U衛星です。ソニーがミッションカメラの開発を、ISSLがバス部の開発を担当しました。2023年1月3日に打ち上げられ、2025年2月19日に規定高度を下回ったため停波しました。運用の詳細は公式Xアカウントにて配信しています。
EQUULEUSの主ミッションは、太陽―地球―月圏における軌道制御技術の実証です。太陽や月の重力を利用することにより、リソース制約の厳しいCubeSatでも実現可能な軌道変換能力で地球―月系のラグランジュ点(地球から見て月の裏側のL2点。以下、EML2)へ効率的に航行することを目指します。2022年11月16日にNASAの新型ロケットSLSによって打ち上げられました。EQUULEUS の運用の詳細は公式Xアカウントにて配信しています。
EQUULEUSは3つの科学観測ミッション機器を搭載しています。1つめは、地球の磁気圏プラズマの全体像を地球から離れた距離から極端紫外光で撮像するミッションで、PHOENIX(Plasmaspheric Helium ion Observation by Enhanced New Imager in eXtreme ultraviolet)という観測機器で観測します。2つめの科学観測ミッションは、月の裏面における月面衝突閃光の観測です。高速で月面に衝突する小隕石の発する一瞬の光を高速カメラで検知することによって、月面に降ってくる小隕石のサイズや頻度を評価でき、将来の月面上の有人活動やインフラに対する脅威を評価します。このミッションは、DELPHINUS(DEtection camera for Lunar impact PHenomena IN 6U Spacecraft)という観測機器で行います。3つめの科学観測ミッションは、シス・ルナ空間(地球から月軌道周辺までの空間)におけるダスト環境の評価です。CLOTH(Cis-Lunar Object detector within THermal insulation)と命名した科学観測機器と衛星バス機器を統合した「ダスト計測器」を用いて計測を行います。
RWASAT-1は、ルワンダ初の人工衛星であり、同国の技術者と東京大学およびアークエッジ・スペースで開発された超小型衛星です。TRICOM-1Rの実績をもとに開発され、RWASAT-1は、国際宇宙ステーション(ISS)から放出可能な衛星設計を採用し、微弱電波受信ミッション(S&F)やマルチスペクトルカメラを搭載していました。 RWASAT-1は、2019年11月20日ISSから放出され、ミッションを行ったのちに2022年に地球大気圏に再突入し運用を終了しました。
MicroDragonプロジェクトは、ベトナム国家宇宙センター(VNSC)と、日本の5つの大学(北海道大学、東北大学、東京大学、慶應義塾大学、九州工業大学)の協力により、50kg級の超小型地球観測衛星の開発・打ち上げ・運用を通じて、VNSCの若手研究員が衛星設計・製造・試験技術を習得することを目的としたキャパシティビルディングプログラムで、2019年1月18日にイプシロンロケット4号機により打ち上げられました。ほどよし衛星シリーズの基盤技術を活用し、短期間でより効率的な衛星バスの製造を実現しました。 MicroDragonは2024に地球大気圏に再突入し、運用を終了しました。
超小型衛星TRICOM-1R(たすき)は、2018年に内之浦宇宙観測所から観測ロケットSS-520-5号機によって打ち上げられ、軌道投入に成功した東京大学が開発した3U級サイズの衛星です。 2017年には同型のTRICOM-1がSS-520-4号機で打ち上げられましたが、ロケットの不具合により打ち上げは失敗しました。TRICOM-1RはTRICOM-1と同等の性能を有しており、地球撮像やデータ蓄積中継(S&F: Store and Forward)システムを搭載した衛星です。さらに、TRICOM-1からの改良点として、新たに即時観測ミッションが追加されています。 TRICOM-1Rは2018年2月3日に打ち上げられ、ミッションを行ったのちに2018年8月22日をもって地球大気圏に再突入し運用を終了しました。
TRICOM-1では、ほどよし衛星シリーズの基盤技術の成果を活用し、さらに高度な姿勢制御技術、地球撮像機能、Store and Forward実験(以降S&Fとする)を実施する3U級サイズの衛星です。また、観測ロケットSS-520を用いて人工衛星を打ち上げるという新しい試みも行われました。 S&Fミッションは、海上・地上などに配置した固定もしくは移動体の送信機から、衛星に向かって取得データを送信し、そして地球を周回している衛星がそれらデータを受信・収集していくミッションです。開発は、東京理科大学,東京電機大学,中部大学,宇宙科学研究所(ISAS)など、ほどよしプログラムに参加した企業や機関と連携して実施しました。 2017年1月15日に打ち上げを試みましたが、残念ながら、打ち上げ時に発生したロケットの不具合により、TRICOM-1は打ち上げに失敗しました。
PROCYON(プロキオン)は2014年12月3日に、小惑星探査機はやぶさ2と相乗りで打ち上げられた超小型深宇宙探査機です。東京大学の当研究室を中心に、宇宙科学研究所(ISAS)や全国の大学と共同で開発されました。PROCYONのメインミッションは、50㎏級超小型深宇宙探査機バス技術の実証(地球から離れた深宇宙で、超小型でも電源・通信・姿勢や軌道の制御など探査機として必要な技術が機能することの実証)です。さらに発展的なミッションとして、世界最高効率のX帯通信用アンプの実証、高精度軌道決定実験、深宇宙空間からのジオコロナ観測、小惑星に対する超近接フライバイ撮像技術の実証を行います。
ほどよし3号機、4号機は、ほどよし信頼性工学に基づく超小型衛星開発初の実証機として2014年6月20日に”Dnepr”ロケットで2機同時に打ち上げられ、現在も運用中です。
ほどよし3号機のミッション機器は中・低分解能光学カメラ、Store & Forward、機器搭載スペース(hosted payload) です。特にStore & Forward、Hosted payloadによるユーザー機器の打ち上げは超小型衛星分野では世界で初めての試みでした。これらは今後小型衛星の利用範囲を大幅に拡大できる可能性があります。ほどよし3号機には、ほどよし衛星の共通バスとして耐放射線コンピュータ、リアクションホイールやスターセンサ、光ファイバジャイロ やGPS受信機などが搭載され、高度な3軸姿勢制御を行ったほか、過酸化水素水スラスターを使って軌道制御も行いました。
ほどよし4号機は、ほどよし信頼性工学に基づく超小型衛星実証機であり、ほどよし3号機と共通のバスを利用しています。中精度の地球観測、新規技術機器の実証、ほどよし3号機との編隊飛行運用をミッションとしていました。ミッション機器は6m級分解能光学カメラと、新規技術として高速(100Mbps)Xバンド送信機とイオンエンジンを搭載し軌道上実証を行いました。これらはマイクロ衛星の重量やサイズ制約の中でデータ通信と軌道制御能力を飛躍的に拡大する技術です。また、ほどよし3号機と同一のStore & Forward、機器搭載(Hosted payload)スペースも搭載しています。
Nano-JASMINEは銀河系内の星の精密な地図をつくることを目的とした、日本で初めての位置天文観測衛星です。高い精度の姿勢制御を行う衛星バスシステム部を中須賀研究室が、望遠鏡部分を国立天文台JASMINE検討室が開発していました。残念ながら打上げはキャンセルとなり、開発は終了しました。
PRISM(愛称:ひとみ)は、柔らかい進展ブームを宇宙で展開し、分解能30mの地球画像を撮影するリモートセンシング衛星です。2009年1月23日にH-2Aロケットで他の相乗り衛星とともに打ち上げられ、ブームの展開とメインカメラでの撮影に成功しました。
XI-VはXIシリーズの2機目のフライトモデルです。XI-IVの打ち上げ成功をうけて、最初に打ち上げられたXI-IVの予備機だったXI-Vに新規太陽電池(CIGS)の宇宙実証などの技術実証ミッションを新しく搭載し、2005年10月27日にロシアから打ち上げられました。XI-Vも2025年3月現在、軌道上で稼働しています。
XI (X-factor Investigator) シリーズは、当研究室として初めての超小型人工衛星の開発プロジェクトです。XI-I、XI-IIがBBM (Bread Board Model)、XI-IIIがEM (Engineering Model)で、XI-IVが最初のFM (Flight Model)です。 XI-IVは2003年6月30日にロシアから打ち上げられ、世界で初めてCubeSat(10cm立方、1kg)の打ち上げ・運用に成功しました。XI-IVは今でも宇宙で稼働しており、CubeSatとしての世界最長寿命を更新し続けています(2025年3月現在)。